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紹介エッセイ「Moonにクンタッチ」
 
 

第六回「カタログの最高出力」

 今回は、車のカタログに必ず載っている最高出力の話です。

 よく、今度出たスカイラインは280馬力で、前のエンジンと馬力は変わらないけどトルクが大きく(太く)なった。などという話をしている人がおりますが、案外1馬力の意味を知らずに話をしている場合が多く思われます。実は1馬力の定義は、世 界共通(測定方法も違う)ではなく日本はほぼアメリカと同じです。

 簡単に言うと、日本の規定では75kgの重さの物を1秒間に1メートル垂直に持 ち上げる力のことです。

 つまり、100馬力なら75kgの重りを1秒間に100メートル持ち上げられるわけです。なんとなく分かったような解らないような話と思われますが、仮に車の重さが1トンあっても100馬力あれば1秒間に約7.5メートル垂直に車を持ち上げることになりその平均スピードは約27キロメートル/時間というすごい力なのです。 これでいかに大きな力か少し解っていただけたものとして話を続けます。ここからはトルクの話も入ってきます。

 トルクとは、ねじる力のことで例えば雪捨ての場面でスコップの先に1kgの雪を載せて、先端から1メートルのところを片手で持って肩の高さまで腕を伸ばしてあげ た時、腕は肩を中心に回される力が働きます。この時肩にかかる力が、1キログラムメートルのトルクと考えてください。(スコップのおもさは無視する。)ですから、最大トルクが20kg*mならスコップの先に20kgの重りをつけ、先ほどと同じく肩まで上げたときの肩にかかる力でエンジンが回っております。

 先ほどの馬力に較べて、意外と小さいとおもわれがちですがそのために、ミッション(カタログの変速比に関係ある)とデフ(カタログの最終減速比に関係ある)があり、そのトルクを発進時には10倍から15倍ぐらいに大きくしますから車は動くのです。

 さてここからが本題で、馬力はトルクを測ってその時のエンジン回転数を掛けた数 字を716で割ったものが馬力なのです。仮に、最大トルク20kg*m/4000 rpmと書いてあればそのエンジンは20*4000/716=111.73馬力と 成りますが、ここで注意するのは、エンジン回転数が4000rpmでもアクセルを 完全に全部踏み込んだ状態なのです。

 実際の馬力測定の場合は、アクセルを全開のままタイヤなどに負荷(ローラーなどで押さえつける)を掛けエンジンの回転数を変化させてトルクを測定します。そして、その時のトルクを測定してエンジン回転数を掛け合せたものを計算して馬力をだします。勿論、このような状態を続けるとエンジンはオーバーヒートを起こしてしまうので短時間に測定します。しかも、国産車の馬力表示は280馬力規制(軽自動車は64馬力規制)というものがありいかに馬力があっても280馬力以上は表示できなくなります。ですから、最初の話でスカイラインにいかにすごいエンジンを積んでも、カタログ馬力は280馬力のままなのです。

 つまりカタログに出ている最高馬力は、普通の人が使う自動車の使い方とは全然違う場合の測定方法ですから、その数字にはあまりこだわる必要は無く、かえって最大トルクの発生回転数が低いほうが実用的な場合が多いものです。ディーゼルエンジンは、馬力は無いが使い易いといわれるのはこのためなのです。最近は、排気ガスなどでディーゼルは締め出される方向にありますが、ヨーロッパなどではエンジンの排気ガスのクリーン化等で重要視されているようです。もともと、ディーゼルエンジンは熱効率がガソリンエンジンよりも良く出来ているので、煙と排気ガスさえクリアできれば将来の可能性はガソリン以上かもしれません。
 
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